スタートは熟議から 2015.5.8

夕方、学校を終えた小学生が向学館にやってくる。昇降口では、スタッフみんなで出迎えだ。ハイタッチする子、元気にあいさつする子、無言で教室に向かう子、上靴を忘れスリッパを借りに来る子…、向学館の若きスタッフ達は一人一人に声をかける。
小学生が帰った後、中学生のバスが到着し、またスタッフは出迎える。部活帰りの高校生が顔を出すこともある。旧女川第一小学校の校舎は、夕方から夜にかけて和やかな活気に包まれる。

震災後間もない頃のガレキに埋もれた町を思い出す。制服も教科書もない新学期、図書室でやった入学式、日没後の町は真っ暗だった。あれから4年、整地、かさ上げが進み、駅もできた。そして、家ではない、学校でもなく、塾でもないけれど、子ども達に声をかけながら迎え入れてくれる場所ができた。 

2011年7月3日、女川二小の理科室に、町内外の教育関係者がズラリと顔を揃え「熟議」という活動が行われた。県教委、町教委、PTA、教員、私も参加した。なんと、スズカンこと鈴木貫文科副大臣もいるではないか。そこにまじって見慣れない若者たちが数名参加していた。

「熟議」と言うだけあって、5、6人のグループ毎に熱心な議論が展開された。被災地女川で、子ども達のためにすべきこと、できること。何が課題なのか。学校はどうあるべきか。副大臣も一緒になって、どんどん白熱していった。副大臣も一緒になって、意見を交換している。

復興は未来に向かうことである。とかくガレキの撤去、物資の支援といったことに目が行きがちだったあの時期に、教育について語り合う町の姿勢に、教師として胸が詰まる思いだった。被災したために教育がおざなりになるわけにはいかないのだ。

それにしても、この場を仕切っているカタリバと名乗る若者たちはいったい何者なのか。

何かが始まる予感がした。

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